AGA(薄毛)は遺伝するとよく言われていますが、本当にそうなのでしょうか?家族や親戚に薄毛の方がいたら自分もそうなるのかと悩ましいですよね。本記事では、AGAは遺伝するのか?発症するメカニズムや予防方法・治療方法について解説していきます。
AGA・薄毛は遺伝するのか?
AGA・薄毛は遺伝します。
薄毛と男性ホルモンの関係を研究していたハミルトン博士は、薄毛は遺伝するのかということについて実験をおこなっています。その実験内容とは、去勢された男性の薄毛進行具合を調べるというものです。
男性ホルモンであるテストステロンは、睾丸から分泌されます。去勢によって、テストステロンが分泌されなくなった男性の髪の毛の状態はどのように変化していったのでしょうか。
まず、わかったのが「思春期以前に去勢されると薄毛にならない」ということ。男性ホルモンであるテストステロンは思春期以降に分泌が始まります。テストステロンが分泌され始める前に去勢されると薄毛にならなかったのです。
次に「もともと薄毛の男性が去勢されると薄毛の進行が止まる」ということ。去勢によりテストステロンが分泌されなくなると薄毛は進行しないことがわかりました。
ハミルトン博士は、去勢された人にテストステロンを投与するという実験もおこないました。
実験対象となるのは、「家系に薄毛の人がいない人」、「家系に薄毛の人がいるけれど、まだ薄毛が始まっていない人」、「家系に薄毛の人がいて、すでに薄毛が始まっている人」です。
どのような結果になったのでしょうか。下記の実験結果をご覧ください。
テストステロン投与前の状態 | テストステロン投与後の状態 | |
---|---|---|
家系に薄毛の人がいない | 薄毛ではない | 変化なし |
家系に薄毛の人がいる | 薄毛ではない | 薄毛が始まる |
家系に薄毛の人がいる | 薄毛が始まっている | 薄毛が進行した |
家系に薄毛がいない人は、テストステロンを投与しても髪の毛の状態は変化がありませんでした。
しかし、家系に薄毛の人がいる場合、薄毛ではなかった人はテストステロンを投与すると薄毛が発症し、薄毛が始まっていた人はテストステロンを投与すると薄毛が進行していったのです。
つまり、テストステロンが増えても薄毛にならない人と薄毛になる人がいて、それは遺伝しているということがわかったのです。
AGAに関する遺伝子は2つ
現在わかっているAGA・薄毛に関する遺伝子は2つです。
- 5αリダクターゼの活性の高さを決める遺伝子
- アンドロゲンレセプターの感受性の高さを決める遺伝子
そもそも薄毛は、テストステロンに5αリダクターゼが結合することによって生成されるジヒドロテストステロン(DHT)が原因であることがわかっています。
家系に薄毛の人がいる場合、テストステロンを投与することによって薄毛が進行したのは、5αリダクターゼを生まれつき多く持っていることを指しているのです。
5αリダクターゼによって生成されたDHTが、アンドロゲンレセプター(AR)に反応するとヘアサイクルの乱れを引き起こしてしまいます。
その結果、髪の毛が十分に成長する前に抜けてしまうのですが、遺伝的に薄毛になりやすい人は、このARがDHTとくっつきやすい傾向にあります。
つまり、薄毛になりやすい人は、ARの感受性が高いともいえるのです。
5αリダクターゼの活性の高さを決める遺伝子
「優性遺伝」という言葉をご存知でしょうか?「優性遺伝」とは、対立した遺伝子があっても、優位な遺伝子の性質が表れることです。
実は、薄毛を引き起こす要因である5αリダクターゼの活性を持つ遺伝子は優性と呼ばれる遺伝子なのです。そのため、父親か母親のどちらか一方でも5αリダクターゼの活性が高い遺伝子を持っていれば、子どもにも5αリダクターゼの活性がある遺伝子が受け継がれているのです。
アンドロゲンレセプターの感受性の高さを決める遺伝子
「アンドロゲンレセプター(AR)の感受性が高い」=「CAGリピート、GGCリピートが短い」
遺伝子配列からすでにこのように特定されているのですが、では「CAGリピート」、「GGCリピート」とは何のことでしょうか。
まず、CAGリピート数とは人の遺伝子の配列の繰り返しをカウントしたものです。C(シトシン)・A(アデニン)・G(グアニン)という塩基成分が順番に配列されている繰り返しの数(リピート数)を調べます。
例えば「CAGCAGCAGCAGCAG」であれば、リピート数は5になります。
このCAGの繰り返しの数が少ないことを「CAGリピート数が短い」といいます。
CAGリピート数が少ないと、DHTに反応しやすいので、有効成分であるフィナステリド(プロペシア®等)が効きやすいということもわかります。
GGCリピート数は、遺伝子配列のなかの塩基成分G(グアニン)・C(シトシン)が配列されているところを見て、その繰り返しの数(リピート数)を調べます。
「GGCGGCGGCGGC」だったら、リピート数は4です。この繰り返しが短いと薄毛を発症しやすいのです。遺伝子配列では、CAGリピート数とGGCリピート数を足した値で、最終的に薄毛を発症するリスクを判断します。
具体的には標準値を38とし、それ以上ならばリスクが低く、それ以下であればリスクが高くなります。
また、ARの感受性を決める遺伝子は、X染色体に存在しています。男の子は父親からY染色体、母親からX染色体を1つずつ受け取ってXYとなって生まれてきます。
X染色体は母親のものが息子に引き継がれます。つまり、薄毛は常に母親からの遺伝になるのです。
母方の祖父が薄毛である場合でも、女性である母親には薄毛が見られることは少なく、その性質を引き継いだ孫が薄毛になると「隔世遺伝だ」と言われる理由はここにあるのです。
AGAが遺伝する確率
前述したとおり、アンドロゲンレセプター(AR)の感受性を決める遺伝子X染色体は、母親や母方の祖父母・曽祖父母のものが息子に引き継がれます。
AGAが遺伝する具体的な確率は、母方の祖父が薄毛の場合で約75%、母方の祖父・曽祖父ともに薄毛の場合で約90%です。AGAの原因は遺伝だけではありませんが、母方の家系に薄毛がいない人よりはAGAを発症する確率が高いといえます。
また、父方の家系が薄毛の場合も遺伝する可能性があります。
5αリダクターゼは常染色体に存在しており、その活性度は遺伝によって引き継がれます。
つまり、母方に薄毛の人がいなくても、父親が薄毛または父方の家系に薄毛の人がいれば、子どもも薄毛になる確率が高まることを意味します。
AGAの遺伝子を調べる方法
遺伝子検査
AGA・薄毛を発症するリスクは遺伝子検査をすればわかります。
では、具体的に遺伝子検査とはどのようにおこなうのでしょうか。まず、遺伝子検査をおこなうには、病院やクリニックでおこなう方法と、遺伝子検査キットを使用して自宅で検査する方法があります。
両者を比較してみました。
病院やクリニックでの検査 | 検査キット | |
---|---|---|
検査方法 | 血液や毛髪、口内粘膜採取 | 口内粘膜採取 |
費用 | 20,000~30,000円 | 10,000~13,000円 |
検査結果が出るまで | 約1ヵ月 | 2~3週間 |
メリット | 検査結果が的確 検査結果に基づくAGA治療がそのままできる |
費用が安い 時間がない人でも気軽に検査できる |
デメリット | 費用が高い | AGAであれば結局病院に行って治療する |
遺伝子検査は3万個の遺伝子のなかから、薄毛に関する遺伝子のリピート数によって判断していきます。前述しているCAGリピート、GGCリピートを見ることによって、有効成分フィナステリド(プロペシア®等)が効きやすいかどうかと薄毛の発症リスクを調べることができます。
フィナステリド(プロペシア®等)による治療効果
薄毛発症リスク
※この2つを足した値で、最終的に薄毛を発症するリスクを判断。
標準値を38とし、それ以上ならばリスクが低く、それ以下であればリスクが高くなります。また、血液検査では治療薬を使用しても問題ないか、副作用が出やすい身体か、ホルモンやミネラルを判定することができます。
特に肝臓機能に障害がある場合、フィナステリド(プロペシア®等)を使用すると副作用が出る場合があるので、問題があった場合はフィナステリド(プロペシア®等)の使用ができないケースもあります。
セルフチェック
AGAの遺伝の確率を解説しましたが、必ず発症するわけではありません。まずは気軽なAGAセルフチェックをおこない、現状を確認してみましょう。
- 最近抜け毛が増えた
- ハリやコリがなくなってきた
- 抜け毛などの症状が進行している
- 生え際や頭頂部が薄くなってきた
- 頭皮の赤み、湿疹、かゆみ
より詳細なチェックはこちらのページからも行えます。併せてご覧ください。
湘南AGAクリニックの薄毛・AGA診断(セルフチェック) >
AGAが発症するメカニズム
ここまででagaは遺伝することをご紹介してきました。
ではそもそもaga発症するメカニズムについては以下の流れとなります。
- テストステロンが5αリダクターゼと結合
- ジヒドロテストステロン(DHT)が生成
- DHTがアンドロゲンレセプターに反応
- 脱毛因子TGF-βが増加
- TGF-βが毛乳頭細胞に脱毛のシグナルを出す
このような流れによってagaは発症します。
より細かなメカニズムについては以下も併せてご覧ください。
AGAとは?原因と対策・ハゲとの違いについて >
AGAの遺伝的特性を持つ方向けの予防方法
AGAの遺伝的特性を持つ方が、すぐに実践できる予防方法を4つご紹介します。
睡眠の改善
睡眠時間を十分に確保しましょう。
睡眠時は、身体機能維持の役割を担う成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは毛母細胞の細胞分裂を活発にすることで、髪の成長を促進してくれるのです。
成長ホルモンは、入眠してから3時間後に最も分泌されるため、睡眠時間が短いと髪が育たない原因となります。
食生活の見直し
バランスのよい食事も大切です。
肉や魚、卵、豆類、乳製品といったタンパク質やアミノ酸を多く含む食品、脂肪分の多いものは控え、牡蠣やレバー、牛肉やチーズ、卵などの亜鉛を多く含む食品を選んでいきましょう。
特に亜鉛は薄毛が気になる人にはしっかり摂って欲しい栄養で、ビタミンCも摂取することで亜鉛の吸収率がアップすると言われています。亜鉛やビタミンCのサプリメントを補助的に活用し、補うこともできます。
ストレスの軽減
強いストレスは頭皮環境の悪化につながります。
毛根に栄養を送る役割を果たしているのは血行です。そのため血行不良を引き起こすとAGAの原因となります。ストレスは自律神経を乱し血行不良を引き起こす場合があるため、ストレスを溜め込まないで発散できる方法を見つけていきましょう。
正しいヘアケア
正しいヘアケアをしっかりおこなうことが薄毛予防にとって重要です。
紫外線を浴びすぎないようにしたり、地肌に優しいシャンプーを使用し、頭皮の皮脂を落とし、最後に育毛剤などで保湿しましょう。
しかし、1日に何度もシャンプーをしたり、洗浄力の強いシャンプーを使いすぎると必要な皮脂まで落としてしまいます。すると皮脂が過剰に分泌され、毛穴が詰まることで抜け毛に繋がってしまうのです。
シャンプーは1日1回を目安とし、指の腹で頭部を刺激しながらおこないましょう。また、洗髪後に髪の毛が濡れたままだと頭皮の血行不良が引き起こるため、しっかりと髪の毛を乾かしてください。
遺伝でAGAを発症した際の治療方法
遺伝でAGAを発症した場合も、適切な治療で改善することができます。AGAは進行性の脱毛症であるため、早い段階で専門医に相談し治療を開始することで、進行を抑えることが可能です。
AGAクリニックでの薄毛の治療方法は、大きく分けて以下の3つです。
- AGA治療薬(内服薬、外用薬)
- メソセラピー
- 毛根再生注射
- 植毛
AGA治療薬には内服薬と外用薬があります。
内服薬には抜け毛予防の治療薬と発毛促進の治療薬があり、どちらか一方だけ、または併用して服用する場合があります。
外用薬は頭皮に薬を直接塗布する方法で、発毛効果や育毛効果が期待できます。
また、超音波などを用いて発毛育毛に必要な成分を浸透させるメソセラピーや、自身の毛包組織を採取しこれを溶かした懸濁液を治療部位に注入する毛根再生注射もあります。
自分の毛を採取して、薄毛・抜け毛が気になる箇所に移植する植毛も選択肢のひとつです。
AGA・薄毛の進行レベルや頭皮の状態によって、最適な治療方法を選択しましょう。
AGAを発症する遺伝以外の原因
薄毛遺伝子を持っていると必ずハゲるというわけではありません。
近年女性でも薄毛治療を受けている人が急増していますが、そもそも女性の体内には男性ホルモンは微量しか存在していないため、今まで説明してきたような2つの薄毛遺伝子による影響は少ないといえます。
また、男性も遺伝が原因のAGA(男性型脱毛症)は25%程度といわれていますので、遺伝子で全てが決まるというわけではありません。遺伝以外が原因で薄毛が発症するのには、生活習慣やストレスといったものが大きく関わってくるのです。
前述したとおり、睡眠や食事などの生活習慣の乱れや過度なストレス、誤ったヘアケアは遺伝関係なくAGA・薄毛の原因となります。
タバコも血行不良を招く恐れがあるため控えましょう。アルコールは適量であれば問題ありませんが、飲酒時に発生するアセトアルデヒドはジヒドロテストステロン(DHT)を増加させてしまいます。過度な飲酒はAGAを進行させてしまう恐れがあるため注意が必要です。
AGAの遺伝についてまとめ
AGA・薄毛は遺伝子の影響もありますが、その遺伝子があるからといって100%薄毛になるというわけでもありません。遺伝的に薄毛になる可能性が高くても、それを把握しつつ、生活習慣改善や頭皮ケアをおこなうことで予防することはできます。
また、薄毛になる遺伝子を持っているのであれば、手遅れになる前に治療薬を飲むなどの治療をおこなえば進行を遅らせることもできるのです。
「遺伝的にハゲるかも・・・」「最近生え際がうすくなってきたかも・・・」そんな方には無料カウンセリングをおすすめします。
当クリニックでは、専門のドクターがしっかりお話を伺っています。薄毛治療には早期発見・早期治療がとても重要です。
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